プラスチックリサイクル中間処理工場を見学しました

現場から見えた資源循環の現在とこれから

先日、自治体から回収されたプラスチック製容器包装やペットボトルを選別・圧縮する中間処理工場を見る機会がありました。

普段、私たちは家庭でプラスチックを分別してごみに出します。しかし、その後どのような工程を経てリサイクルされているのかを実際に見る機会はあまりありません。

今回、現場を見て特に印象に残ったのは、最新の選別設備や大きな圧縮機そのものではありませんでした。

むしろ、

「なぜ、ここまで細かく市町村ごとに分けて管理しなければならないのだろう」

ということでした。

そして調べていくと、そこには現在の容器包装リサイクル法の仕組みと、近年急速に進歩しているプラスチックリサイクル技術との間に、少しずつ生じ始めている「ずれ」が見えてきます。

市ごとに、徹底して分けられていた

工場には複数の市から回収されたプラスチックが搬入されています。

ところが、それらをまとめて処理するわけではありません。

工場内の保管場所は市ごとに区分され、

「今日は○○市のプラスチックを処理する日」

というように、処理する自治体が決められていました。

その日の対象ではない市から搬入されたプラスチックは、一旦それぞれの専用スペースで保管されます。

選別ラインに投入された後も同じです。

家庭から排出された袋の中には、対象となるプラスチックだけではなく、リサイクルに適さない「禁忌品」や可燃物なども混入しています。

それらを選別工程で取り除きますが、取り除いたものも一緒にはしません。

どの市から出たものなのかが分かるように管理され、原則としてその市へ戻されます。

さらに、選別されたプラスチックを圧縮し、大きな直方体の「ベール」にした後も、市ごとに別々の場所に保管されます。

A市のベールとB市のベールを一緒にしてしまうことはありません。

これはかなり徹底した管理です。

設備があっても、その日は動かない

もう一つ印象的だったことがあります。

見学した工場には、プラスチック製容器包装を処理するラインとは別に、ペットボトルを処理するラインもありました。

ところが、見学した日はそのラインが完全に停止していました。

故障していたわけではありません。

その日に処理していた自治体からはペットボトルの処理を受託していなかったからです。

つまり、

設備はある。人もいる。しかし、その日の契約対象ではないので機械は動かない。

別の自治体を処理する日には動くのでしょう。

現場を見ていると、これは少し不思議に感じます。

工場というものは、一般的には設備をできるだけ連続して動かし、稼働率を上げた方が効率的です。

ところがプラスチックリサイクルでは、単純にそうできない事情があります。

なぜ、ここまで市町村ごとに分けるのか

背景には、容器包装リサイクル法があります。

この法律では、家庭から出る容器包装廃棄物について、

消費者が分別して排出し、市町村が分別収集し、事業者が再商品化を担う

という役割分担を基本としています。

市町村は分別収集計画を作成し、一定の基準を満たしたものを再商品化へ引き渡します。2026年度を始期とする第11期分別収集計画では、全国1,740市町村すべてが何らかの容器包装廃棄物の分別収集を予定しており、プラスチック製容器包装についても1,434市町村、82.4%が分別収集を予定しています。(環境省)

この制度によって、日本では全国的な分別収集とリサイクルの仕組みが構築されてきました。

市町村ごとに搬入量、選別量、残渣量、再商品化量などを把握しなければなりませんから、中間処理工場でも市町村別の管理が必要になります。

今回見た運用は、決して工場側が好き好んで複雑にしているわけではありません。

現在の制度と契約に忠実に運用しようとすると、こうなるのです。

ただ、本当に社会全体として最も効率的なのだろうか

ここで疑問が生まれます。

例えば、同じような品質のプラスチックがA市から10トン、B市から10トン、C市から10トン搬入されたとします。

リサイクル設備から見れば、同じ種類の原料です。

それでも、

A市用の置場
B市用の置場
C市用の置場

を設け、

今日はA市、明日はB市、翌日はC市、

というように処理することがあります。

出来上がったベールも別々です。

選別によって発生した可燃物なども、市ごとに管理し、場合によっては一度その市へ戻します。

この仕組みには大きな長所があります。

「誰が排出した廃棄物なのか」

「どれだけ再商品化されたのか」

という責任とトレーサビリティが明確だからです。

一方で、社会全体の効率という視点から見ると、

  • 市町村別の広い保管スペースが必要になる
  • 同じ設備を自治体ごとに時間を分けて使用する
  • 設備稼働率が下がる
  • 人員配置が複雑になる
  • フォークリフトなどの構内移動が増える
  • 選別残渣を自治体へ戻すための輸送が発生する
  • 同じ機能の設備を複数の工場で持つ必要が生じる

という別の問題が見えてきます。

リサイクルすること自体が目的になってしまい、

「そのリサイクルのために、どれだけ電気、燃料、人、設備、土地を使っているのか」

という視点が抜けてはいけないと思います。

実は法律も少しずつ変わり始めている

この問題に対して、法制度もまったく動いていないわけではありません。

2022年に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」、いわゆるプラスチック資源循環法では、市区町村が再商品化事業者と連携して再商品化計画を作り、国の認定を受ける制度が設けられました。

この制度では、従来、市町村側と再商品化事業者側でそれぞれ行っていた選別や圧縮などの中間処理工程を一体化・合理化することが可能です。(環境省)

国の説明でも、認定を受けた場合、市区町村は選別・保管等の中間処理を省略して、より効率的な再商品化を行うことができるとされています。(環境省)

これは重要な変化です。

これまでの

「きちんと選別して、きちんと圧縮してから渡す」

という考え方から、

「後工程まで含めて考えて、必要のない処理なら省略する」

という考え方へ少しずつ変わり始めているからです。

さらに、リサイクル技術そのものも変わっている

そして、法制度以上に大きく変化しているのが技術です。

最近の日経ESGでは、レゾナックが使用済みプラスチックを分子レベルまで分解し、エチレン、プロピレン、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)などの基礎化学原料へ直接戻す新しいケミカルリサイクル技術を開発していることが紹介されていました。

これは単に「プラスチックを別のプラスチック製品にする」という話ではありません。

石油から作っていた化学原料そのものへ戻そうという発想です。

しかも、レゾナックではすでに2003年から川崎でガス化ケミカルリサイクルを商業運転しており、混合プラスチックを樹脂の種類ごとに細かく分別せず処理しています。年間約6万トン、累計126万トンを処理した実績があるとされています。

現在開発中の新技術では、さらに工程を短くして基礎化学原料を直接得ることを目指しており、既存のケミカルリサイクル技術に比べてコストを2割削減することを目標としています。

ここまで技術が進むと、一つの疑問が出てきます。

将来も、現在と同じレベルの細かな選別や圧縮が必要なのでしょうか。

「どこの市のプラか」より「どんなプラか」

現在の行政制度では、

「A市から出たプラスチック」

「B市から出たプラスチック」

ということが非常に重要です。

しかし、リサイクル設備から見ると、重要なのは必ずしも発生した市町村ではありません。

むしろ、

  • PETなのか
  • PEなのか
  • PPなのか
  • 複数樹脂の混合物なのか
  • 汚れが多いのか
  • 異物がどの程度含まれるのか

という資源としての性状の方が重要です。

ここに、現在の制度と技術との間のずれがあります。

行政制度は「どこから出た廃棄物か」を中心として管理する。

一方、リサイクル技術は「どのような原料か」を見ている。

今後、この二つをどう調整するかが大きな課題になるのではないでしょうか。

何でも混ぜればよい、という話ではない

もちろん、「だったら全部一緒に回収してしまえばよい」という単純な話でもありません。

例えばPETボトルのように比較的単一素材で、高品質の再生材として再利用できるものは、他のプラスチックと分けてマテリアルリサイクルした方が合理的な場合があります。

一方、

  • 多層フィルム
  • 複数の樹脂を使用した容器
  • 紙やアルミなどとの複合材
  • 汚れのあるプラスチック

まで細かく分離しようとすると、大量のエネルギーや人手が必要になります。

将来必要なのは、

「できるだけ細かく分別すること」ではなく、「その後のリサイクル方法に必要なところまで分別すること」

なのではないかと思います。

高品質なマテリアルリサイクルに向くものは分ける。

混合物のまま高度なケミカルリサイクルができるものは、必要以上に分けない。

そして、どうしても再資源化が難しいものについては高効率な熱回収を検討する。

そのように、プラスチックの性状に応じて最適なルートを選ぶ方が合理的でしょう。

「リサイクル率」だけではなくCO2まで見る

もう一つ必要なのは、評価方法の変化だと思います。

ある方式で100%リサイクルできたとしても、

選別するために大量の電力を使い、

何度もトラックで運び、

洗浄に水とエネルギーを使い、

最終的に品質の低い再生材しかできないのであれば、

社会全体として本当に最善なのかは分かりません。

反対に、多少歩留まりが低くても、処理工程が少なく、化石由来原料を大量に代替できる技術の方が、CO2排出量まで含めれば有利な可能性があります。

したがって今後は、

「何%リサイクルしたか」

だけではなく、

「1トンの廃プラスチックから、どれだけ天然資源の使用を減らし、どれだけCO2排出量を削減できたか」

というLCA(ライフサイクルアセスメント)的な評価がますます重要になると思います。

新しい「高度化法」が目指しているもの

こうした方向を後押しする法律として、現在注目されているのが「再資源化事業等高度化法」です。

この法律は、単に廃棄物をリサイクルするだけではなく、

温室効果ガス排出量の削減、高品質な再生材の供給、広域的・効率的な再資源化

を進めようというものです。

2026年には、廃プラスチック類などを対象として関東広域を処理区域とする「高度再資源化事業」の認定もすでに行われています。(環境省)

ここには、従来の「市町村ごとの廃棄物処理」から一歩進んで、

より広い地域で資源を集め、最も適した設備で再資源化する

という方向性が見えます。

「物を分ける管理」から「情報で管理する」こともできるのでは

今後もう一つ可能性があると思うのが、デジタル技術の利用です。

現在は、市町村別に物理的に置場を分けることで、

「これはA市のプラスチック」

「こちらはB市のプラスチック」

と証明しています。

しかし、搬入時の計量、画像認識による組成分析、選別率、残渣率、再商品化量などをデータとして管理できれば、

必ずしも最後まで現物を市町村ごとに分離し続けなくても、責任と数量を把握できる可能性があります。

例えば、

A市 10.2トン
B市 8.7トン
C市 12.1トン

を同じ設備で連続処理し、その処理結果をデータ上で正確に管理する。

そうなれば、

「混ぜないことでトレーサビリティを確保する仕組み」から「データによってトレーサビリティを確保する仕組み」

へ移行できるかもしれません。

もちろん、不適正処理を防止し、市町村の一般廃棄物処理責任を明確にするための制度は必要です。

したがって単純な規制緩和ではなく、管理の方法そのものを高度化する必要があります。

工場を見て感じたのは、「現場だけでは変えられない」ということ

今回見た工場では、決められた制度や契約に沿って、非常に細かくプラスチックが管理されていました。

だからこそ逆に、

現在の仕組みの中で、どれだけの設備、人員、保管場所、輸送が必要になっているのか

がよく分かりました。

これは一つの事業者だけで解決できる問題ではありません。

事業者が勝手に複数自治体のプラスチックを混ぜたり、選別工程を省略したりすることはできません。

市町村も、それぞれ一般廃棄物の処理責任があります。

再商品化事業者にも受入条件があります。

だからこそ今後は、

自治体、中間処理事業者、再商品化事業者、国が一緒になって、「社会全体として一番効率的な資源循環とは何か」を考える必要がある

と感じました。

法律も、技術の進歩に合わせて変わる必要がある

容器包装リサイクル法は、日本に分別収集と再商品化の仕組みを定着させる上で非常に大きな役割を果たしてきました。

現在もその役割は重要です。

しかし、法律が作られた1990年代と現在では、リサイクル技術も社会が求めるものも大きく変わっています。

現在求められているのは、

「ごみを減らすこと」だけではありません。

資源を海外に依存し過ぎないこと。

CO2排出量を減らすこと。

再生材を安定して産業へ供給すること。

そして限られた人員・設備・エネルギーを効率的に利用すること。

日経ESGの記事では、使用済みプラスチックを「都市油田」と捉え、国内で継続して発生する炭素資源として利用する考え方が紹介されています。

私はこの表現がとても分かりやすいと思います。

家庭から出たプラスチックを単なる「ごみ」として見れば、

どの自治体のごみなのか

が重要になります。

しかし「国内に存在する炭素資源」として見れば、

どこで、どの技術を使えば最も価値の高い資源に戻せるのか

という問いに変わります。

「正しく分別する」から「最も効率よく循環させる」へ

今回の工場見学を通じて感じたのは、現在の制度が間違っているということではありません。

むしろ、現在の制度を現場がきちんと守っているからこそ、次の課題が見えてきたのだと思います。

これまでは、

「きちんと分別し、きちんとリサイクルする社会」

を作ることが大きな目標でした。

これからはその次の段階として、

「必要な分別を行い、最も少ないエネルギーとコストで、最も価値の高い資源へ戻す社会」

を目指す必要があるのではないでしょうか。

そのためには、リサイクル技術だけが進歩しても十分ではありません。

自治体の契約のあり方、中間処理施設の役割、広域処理、トレーサビリティ、そして容器包装リサイクル法、プラスチック資源循環法、再資源化事業等高度化法といった法制度についても、技術の進歩に合わせて見直していく必要があります。

プラスチックリサイクル工場を見学して見えてきたのは、大きな機械ではなく、

「法律、行政、技術、現場をどうつなぎ直せば、社会全体でもっと効率的な資源循環ができるのか」

という課題でした。

リサイクルという言葉だけを聞くと、既に完成した仕組みのように思えます。

しかし現場を見ると、日本のプラスチックリサイクルは今まさに、「廃棄物を適正に処理する仕組み」から「資源を最適に循環させる仕組み」へ変わろうとしている途中なのだと感じます。

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